先に言うと、ニシアフは1匹で問題ありません。仲間が要る生き物ではなく、むしろ1匹のほうが落ち着きます。そして2匹を同じケージに入れるのは、うまくいく組み合わせが限られていて、初めての人にはすすめません。この記事では、なぜそう言えるのか、うちのおはぎが1匹でどう暮らしているか、それでも2匹入れるなら何に気をつけるか、を書きます。

1. 「寂しい」は人間の側の感覚

ニシアフは、野生では1匹ずつで暮らすヤモリです。群れを作らず、決まった縄張りの中で、昼は岩の下や土の中に隠れ、夜に出てきて虫を食べます。仲間と並んで寝る習性も、遊び相手を求める習性もありません。

だから「昼間ずっと隠れている」のは、寂しいのではなく、それがこの生き物の普通の一日です。犬や猫の感覚で見ると「1匹きりでかわいそう」に見えますが、ニシアフの側からすると、静かで、暖かくて、隠れ家があって、餌が来る。それで足りています。

💡 「仲間がいないストレス」はニシアフにはありませんが、「仲間がいるストレス」はあります。同じケージにもう1匹いると、隠れ家と暖かい場所の取り合いになり、気の弱いほうが隠れ家に入れない、餌を取れない、ということが起きます。これは3章で書きます。

2. おはぎの1匹暮らし(4か月)

シェルターの入口から顔だけ出して寝ているおはぎ
昼間のおはぎ。これが1日の大半。入口から顔だけ出して寝るのが定番の形
🦎 おはぎの一日は、だいたいこう
1
昼間はシェルターの中で寝ている
たまに入口から顔を出していることがありますが、毎回ではありません。昼間に見られるのは、よくてそこまでです。
2
夜、扉を開けると近づいてきて、舌をペロペロ出す
手に乗ってくるのはたまにです。これは「寂しかった」ではなく、「暗くなった・扉が開いた・餌の時間」の合図が揃ったからだと思っています。
3
食べて、飲んで、少し歩いて、また隠れる
3日に1回、コオロギ3匹。食べ終わると水を飲んで、しばらく床を歩いて、シェルターに戻ります。
4
体重は増え、脱皮はきれいに終わる
お迎え時24gが4か月で35g。脱皮は2〜3週間に1回。1匹で「足りていない」ものは、今のところ何もありません。
夜、扉を開けると手に向かって出てくるおはぎ
7月のある夜、扉を開けたら出てきたところ。今は近づいて舌を出すくらいで、手に乗るのはたまに。昼間はまずこうならない

「寂しそう」と感じる場面があるとすれば、それは昼間に隠れているところを見たときだと思います。でもそれは夜行性の生き物の昼間です。夜の姿を見れば、1匹で十分に忙しくしているのが分かります。いつ姿を見られるかは、別の記事に書きました。

3. 2匹を同じケージに入れると何が起きるか

ここは一般論です。うちは1匹なので、実際に見たわけではなく、飼育者の間で広く知られていることを整理します。

組み合わせ何が起きやすいか結論
オス+オス縄張りの争い。噛み合い、尻尾の欠け、けが絶対に不可
オス+メス繁殖する。メスは望まないのに追い回され、産卵で体力を削られる。卵の世話と子の引き取り先が必要になる繁殖する覚悟がない限り不可
メス+メスうまくいくことも多いが、体格差があると小さいほうが隠れ家と餌を取れない。片方だけ痩せていく条件つきで可。ただし初心者向きではない
大きさの違う2匹性別に関係なく、小さいほうが弱る。極端な場合は尻尾や指をかじられる不可

もうひとつ、同居の一番の問題は「どちらが食べたか、どちらのフンか、分からなくなる」ことです。うちは1匹だから、便の色がおかしければおはぎのもの、食べ残しがあればおはぎが食べていない、と迷いなく分かります。2匹いると、片方の拒食に気づくのが遅れます。病気も、片方から片方にうつります。

「2匹いれば楽しい」の「楽しい」は人間の側で、ヤモリの側には「取り合い」と「見落とされる」しかない。それが、経験者が同居をすすめない理由です。

4. どうしても2匹飼うなら

答えは簡単で、ケージを2つにすることです。ケージが2つなら、上の表の問題は全部なくなります。ニシアフ1匹のケージは小さくて済むので、2つ並べるのは犬猫を2匹飼うより場所も手間もかかりません。

それでも1つのケージに入れるなら、飼育者の間で言われている最低条件はこれです。

  • メス同士で、体の大きさがほぼ同じ。性別はお腹側で確認する(自信がなければ店で見てもらう)。
  • ケージは1匹用の倍以上。幅60cm以上が目安。暖かい側と涼しい側を、2匹が別々に使える広さ。
  • 隠れ家・水入れ・湿った隠れ家を、それぞれ2つずつ。取り合いを起こさない。
  • 餌は別々に、目の前で渡す。どちらがいくつ食べたかを数える。
  • 体重を2匹とも毎週量る。片方だけ減ったら、すぐ分ける。
  • 新しい子は、最低1か月は別のケージで様子を見てから。病気や寄生虫を持ち込まないため。

これだけやって、それでもうまくいかないことがあります。分けるためのケージを最初から用意しておくのが、結局いちばん安全です。

5. うちの場合:別の生き物とは別のケージ、別の部屋

うちには、おはぎのほかにオカヤドカリがいます。ケージは別です。以前カナヘビを飼っていたときは、玄関の別の部屋に置いていました。カナヘビには昼間のライトが要るので、同じ棚に置くとおはぎの側が明るくなってしまう、というのが理由です。オカヤドカリのケージはおはぎのケージの横に並べていますが、中身が行き来することはありません。

種類の違う生き物を同じケージに入れないのは、性格の問題より前に、必要な温度・湿度・明るさが違うからです。カナヘビは昼行性で日光浴をする生き物、おはぎは夜行性で暗くて湿った隠れ家が要る生き物。同じ箱に入れると、どちらかが必ず我慢することになります。ライトの明るさが理由で部屋まで分けているのは、その延長です。

シェルターの入口から顔を出して様子をうかがうおはぎ
昼間、たまにこうして顔を出している。毎回ではない。相手は人間で十分、というのがうちの4か月の結論

おはぎにとっての「相手」は、いまのところ、夜に扉を開けてコオロギを持ってくる人間です。それで足りているように見えます。

正直に書くと、おはぎはオスで、いつか女の子を迎えたい気持ちは私にもあります。ただそれは「おはぎが寂しいから」ではなく「自分がもう1匹見たいから」で、迎えるならケージはもう1つ買います。同じケージに入れれば繁殖の話になり、卵と子ヤモリの引き取り先まで考える別の覚悟が要ります。今はまだ、そこまでの準備がありません。

よくある質問

Q. ずっと隠れているのは、寂しいからでは?

A. 違います。夜行性の生き物の昼間の姿です。夜に出てきて食べて動いていれば、それが元気な印です。昼間に何度も出てくるほうが、むしろ温度や隠れ家に問題がある合図です。

Q. ペットショップでは何匹も一緒にいたけど?

A. 店は短期間の展示で、毎日プロが見ています。家で何年も一緒にするのとは別の話です。ちなみにうちのおはぎは、店でも1匹でケージに入っていました。

Q. レオパ(ヒョウモントカゲモドキ)と一緒に飼える?

A. すすめません。見た目は似ていますが、レオパは乾いた環境、ニシアフは湿った環境を好みます。湿度の好みが合わないので、どちらかが体調を崩します。別のケージで。

Q. 2匹目を迎えたら、最初にやることは?

A. 別のケージで最低1か月、隔離して様子を見ることです。体重・便・食欲が安定しているのを確かめてから。これは同居するしないに関わらず、うちも1匹目のときにやりました(お迎え1週間の記事に書きました)。

Q. おはぎに、いつか相手を迎える予定は?

A. 気持ちはあります。おはぎはオスなので、いつか女の子を、とは思っています。ただ今は1匹で健康で、こちらも1匹分の世話でちょうどよく回っています。迎えるとしてもケージは別で、一緒にするなら繁殖の覚悟とセットです。